招待講演

Data Intensive 農業への期待

木浦卓治,平藤雅之,田中慶(農研機構中央農研),二宮正士(東京大学)

農業は経験が重要だと言われている。これまでもこの経験が何かを明らかにしようとする研究が行われてきたが、成功したとは言えない。この状況下、経験豊かな農業者が引退する時期にさしかかっている。農業向けのセンサーネットワークや人間の行動のセンシング技術も進んできており、農業現場のデータは以前より容易に収集できるようになっている。このような状況の下、中央農業研究センターではData Intensiveな農業が、気候変動に自動的に追従する適応型生産システムの形成に適用できるのではないか、Global Eerth Observation System of System(GEOSS)に貢献できるのではないかと期待して、研究を展開している。このような観点から、Data Integration and Analysis System(DIAS)での農系グループの研究や、Field Serverに関わる研究について報告する。データがあればどう農業に役立たせることができるか?そして、GEOSSにどう貢献できるのか?今後、工学系の方々と密に連携しながら、成果つなげたいと考えている。


気象学・気候学分野における数値シミュレーションとデータ解析

日下博幸(筑波大学計算科学研究センター/生命環境科学研究科)

気象学・気候学分野では、大規模な数値シミュレーションが実施されている。大気の3次元的なふるまいの予測や再現を目的としているため、データ量は3次元の格子点数*出力時間スライスになる。一般的には、このような4次元データ(空間3次元+時間1次元)をシミュレーション後に解析することになる。講演では、これらの現状と課題について紹介する。


ERGサイエンスセンター:統合解析ツールによる三位一体のジオスペース研究の推進

関華奈子,三好由純(名古屋大学STE研 ERGサイエンスセンタータスクチーム)

太陽活動極大期に頻発する宇宙嵐は、太陽から地球上層大気までの広い範囲で領域間相互作用が強まることにより生じる大規模な宇宙環境変動現象である。次期太陽活動極大期に向けて、国際的には、ILWS(International Living With a Star)計画のもとで、米国のRBSPを含む諸衛星計画が2012年頃の打ち上げを目指して進んでおり、国内では、衛星観測、地上観測、およびデータ解析・モデリング・理論の三位一体の密接な共同を組み込んだERG衛星計画の検討が進んでいる。ERG計画においては、多点観測で得られた多様な観測データを、数値モデルを介して結合する研究手法の確立が本質的となるため、ERGサイエンスセンターにおいては、地上観測、衛星観測、数値実験をつなぐ実証型モデルの構築とともに、異なるデータを同じプラットフォームで効率的に解析可能な総合解析ツールの開発が求められている。このサイエンスセンター機能のうち、私たちはこれまでに、関連する地上観測データや数値モデル出力を、いかに既存の衛星データ解析ツールと同じプラットフォームで解析可能にするかの検討を行ってきた。本講演では、統合解析ツールのベータ版開発と、関連メタ情報付きのデータベースおよびwebツールの作成の取り組みについて紹介する。


CDF実験におけるData Handling

武内勇司(筑波大学物理学系)

米国国立フェルミ加速器研究所の陽子・反陽子衝突型円形加速器テバトロンを用いた高エネルギー素粒子実験のひとつであるCDF実験でのデータ収集や処理,そして末端の研究者がそのデータを使ってどのように物理解析を遂行しているかについて紹介する.


GEO Gridからサイエンスクラウドへ

田中良夫(産業技術総合研究所情報技術研究部門)

Global Earth Observation Grid(地球観測グリッド,GEO Grid)は,グリッド技術を用いて地球観測衛星データの大規模アーカイブ・高度処理を行ない,さらに各種観測データベースやGISデータと統合して環境や防災などの分野に簡単に使ってもらう事を目指したシステムである.産業技術総合研究所では,GEO Gridにクラウドの概念と技術を導入して発展させ,E- サイエンスの研究基盤として利用されるサイエンスクラウドの研究開発を進めている.本講演では,グリッドからクラウドへの移行や,他の分野への展開における技術的な課題や得られた知見を紹介する.


統計科学・可視化・マイニング

田村義保(統計数理研究所データ科学研究系)

統計科学は「科学の文法」と呼ばれ、その役割の一つは、データの裡に潜む真実や法則を見出すことである。ICTの発達等により、一つの研究で扱うデータ量は飛躍的に増加している。また、大規模シミュレーションの計算結果も大容量になっている。このような中で、統計科学の活用がどのような結果をもたらすかについて紹介する。


NICTサイエンスクラウド:現状と将来計画

村田健史,亘 慎一,加藤久雄,國武 学,長妻 努,津川卓也,久保勇樹,久保田 実,品川裕之,石橋弘光,田 光江,森川靖大(NICT),山本和憲(愛媛大),佐藤 建(NICT),鵜川健太郎(株式会社セック),久保田康文(JAXA/ISAS)

情報通信研究機構(NICT)では、新しい科学研究基盤としてサイエンスクラウド(Science Cloud)の構築を進めている。サイエンスクラウドは、日本初の科学研究に特化したクラウドであり、複数のスパコン、大容量ストレージと分散処理システム、TDW(タイルドディスプレー)や3Dディスプレー、データベースなどの大規模データ処理に特化したシステムである。本発表では、これらの紹介を行うとともに、システムで用いられている技術やそこから期待される効果について報告する。


格子QCDデータグリッドILDG/JLDGの構築と運用

吉江友照(筑波大学計算科学研究センター/数理物質科学研究科)

ILDG/JLDG は、計算素粒子物理学(特に、格子QCD)研究者の為のデータグリッドであり、国内外の研究者が研究データを効率的に共有する仕組みを提供している。本講演では、ILDG/JLDG の概要を述べ、その構築と運用にユーザーの立場で携わった経験をもとに、組織をまたがるデータ共有システムの勘所を議論する。